一度切り

小さい頃、実家近くの竹藪に入った時のことだ。夕焼けが始まる少し前だったと思う。落ちて一面を覆っている枯れた笹が白く光っていてとてもきれいだった。射し込んでいる陽の具合なのか地面からの反射もあるのか竹藪全体がきらきらしていてとてもきれいで見上げると光の雨が降っているようだった。少しの間見とれていた。鬼ごっこの途中だったことを思い出し、そこから離れてしまった。

何日か経ってから同じ時間に同じ場所に行ってみた。あの時見とれたきれいな光景はもうそこにはなかった。その後何回も訪れてみたけど結果は同じだった。

今でもあの竹藪のことを時々思い出す。一度しか見れなかったあの光景はいったい何だったのか。

でもまあ、このことに限らず全て一度切りなんだよな。一日として同じ日は来ないし、きれいな朝焼けも心洗われる夕焼けも全く同じものは二度と見れない。一度切りだったからこそ心に深く刻まれているということだってある。

その瞬間を全力で受け止めればいいだけだ。後悔のないように。などと言いつつ、今日も踏み切れなくて反省していることがある。