菊地成孔について その4

 理論コース受講希望者の皆様へ

 この度は受講を御希望頂き有り難う御座います。レッスンに関する詳細をお送り致しますので、受講を決定される場合、もしくは御質問等は追ってメールにて御返答下さい。受講を決定される方は、近日中(大体2週間後まで)の受講可能な日時を添えて下さい。速やかに御連絡致します。

     
        菊地成孔


 <日時、料金システム、場所について>

 1)マンツーマンで行います。

 2)1回のレッスンは最低1時間から最高4時間までとさせて頂きます。

 3)レッスン場所は東横線都立大学駅前スタジオ「リンキーディンク」(電話)xxxx-xxxx

 4)レッスンの日程は毎回レッスン終了時に打ち合わせの上、次回分を決定します。

 5)レッスンの開始時刻は、レッスン前日に御連絡します(レンタルスタジオという都合上予約を入れられるのが前日に成るためです。大雑把な時間帯は既決しておいた上で、正確な決定時刻を前日に連絡という形になりますの)

 6)レッスン料は1回1時間¥5000です。

 7)月謝制ではなく「毎回次回分を支払う」システムです(従ってレッスン初回のみ2回分のレッスン料を頂く形に成ります)。

 
 <内容について>


 ジャズ、ポップス、ロック等に対応した和声理論、作曲法、編曲法、アドリブの方法からソロコピーの分析、譜面の書法まで、また、中級者の方の実践的な疑問にお答えするなど、個々人の知識と能力に対応したカリキュラムを設定し、ニーズに合わせて御指導させて
頂きます。

 初回レッスンでは、カリキュラム作成用のカウンセリングとして、皆様の読譜力、及び理論知識の簡単なチェックを行い、2回目からを正式なレッスンとさせて頂きます。




 <初回レッスンに必要なもの>

 ・楽器(鍵盤楽器の方は結構です)

 ・五線紙、筆記具

 ・カリキュラム作成の参考にさせて頂くために、こういう演奏がしたい。とか
  ここがどうなっているかを知りたい。などの参考のソース(CDもしくはカセット
  で、DAT、MD及びアナログ盤不可)

 ・作曲作品がある方はその譜面と音源(同じくCDもしくはカセットで)

 ・レッスン料2回分(初回と次回分として)



以上、初回レッスン前に菊地成孔から届いたメールの内容だ。



補足として、当時の俺の機材を挙げておく。
フェルナンデスのエレキギター
マツオカのクラシックギター
ヤマハアップライトピアノ(母の所有物。実家だったので)。
タスカムの4トラック・カセットMTR
シャープの録音ができるポータブルMD。
アップルのマッキントッシュ・パフォーマ5440。
シンセ音源は持っておらず、フリーで配布されていたUNIX用のソフトウェア音源をマックで走らせていた。



先生は続ける。

「理論的に理解してなくても、感覚的に和声理論が身に付いてるっていうのかな、それがちゃんとしているところと、わざとかどうか判断できないけども、崩れているところが一曲の中で同居してたりする」

譜面を見ながらカセットテープの該当箇所を探し、指摘していく。

「ほら、ここのところはセブンスからトニックに行ってドミナントモーションが完結してるんだけれども、次のところだとセブンスに行くものの戻って来ないまま放ったらかし。ね? バッハの無伴奏チェロと体裁は似てるんだけども、どこかが違う。やりたいことは分かるんだけど、ちぐはぐで不安定。これはもう病症だね」

俺の曲を再生しながら先生は訊いてくる。

「今までどんな音楽聴いてきた? 持ってるジャズのアルバム挙げてみて」

ソニー・ロリンズの『サクソフォン・コロッサス』」

「はいはい。あれは名盤ですね」

「あと、エンリコ・ピエラヌンツィのロニー・キューバーのバリトン・サックスが凄いやつ」

「んー、あとは?」

「その二枚だけですね、ジャズは」

ロックバンドを続けようとしたが失敗したこと。コードを覚えたりスケール練習を積み重ねる度に自分の個性が失われるような気がして、いったん全部放棄したこと。結局行き詰まって理論を学び直そうと思ったこと。
そんな話をして最初のレッスンは終わった。

スタジオを出ると、次のレッスン生が待っていた。
後にデートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデンに参加することになる、ゴセッキーさんだった。


初出:xiukj.tumblr.com 2012.1.20