Rectified Mystery

Shuichi Kojima『Rectified Mystery』f:id:xiukj:20190527195258j:image

 

セルフライナーノーツには音楽の魔女とストラトについてしか書かなかったので、残りのことはここに書いておく。 

先日のM3にて自身初となる2作品同時リリースを敢行したが1か月経った今も疲れが抜けず、ふらふらしていて今までの自分では考えられないようなことを色々しでかしてしまっている。もっと計画的に創作活動をしなければいけないなと思う一方、このタイミングでしかできないことだったのでやり通してよかったという達成感はある。制作中に「発表を延期してもっとじっくり作るべきではないのか?」と何度も自問したが、ある速度でしか届かない場所もあるということが自分を追い立て続けた。いつだってロックを加速するのは焦燥感だ。

全身全霊を込めて 完成したアルバム『Rectified Mystery』、久々に本名名義で発表することにした。それだけ今の自分と向き合って取り組んだということ。遅々として上達しないギターの腕前も含めて。

「家族に聴かせられるアルバムを作る」

これがこの作品を作ることにした一番大きな動機だ。長年音楽をやってはいるがこじらせたインストばかりで、両親や祖母達や姪っ子や親戚の子らに聴かせられるような作品がないというのがいつも心のどこかに引っ掛かっていた。「どういう音楽をやっているの?」と聴かれる度に聴いても分かってもらえないという気がしてお茶を濁して避け続けてきた。歌が入っている音楽しか聴かないという人の割合の多さにも辟易していた。自信のなさと自意識過剰の相乗効果で評価を怖れて逃げていただけなのかも知れない。

家族向けなら普通はアコースティック・ギターを選びそうなものだが、ソロ・エレクトリック・ギターのための前奏曲集という形をとった。ギター1本とアンプ1台、それだけでもここまで表現できるというエレクトリック・ギターの可能性を示したかった。ピアニシモによるクリーントーンの響きの美しさはアンプに繋いだギターでしか表現できないことのひとつだ。

多重録音も編集もなし、ここに記録されたのは素の自分の姿だ。部屋の片隅でギター弾けるらしい人が何か爪弾いている、というような感覚で楽しんでいただければと思う。

家族に聴かせられるアルバム、とは言ったものの最初に耳にする1曲目の頭で少し暴れてしまった。その後に続くオガワマユの紡いだきれいなメロディへの踏み絵だと思っていただければ幸いだ。