音楽仲間が欲しかった。

 ツイッターには戻れそうにない。ここのところ毎日リフ作り動画の転載ツイートしかしてない。
 学校に行かなくなるあれといっしょだ。最初は1日ぐらい休んでも大丈夫かなという気持ちで始まって、まああと2日休めば週末だしと追加で休み、何となく戻りづらくなってそのままずるずると休んでいたら夏休みに入ってしまい、休み明けにしれっと戻れば気づかれないかなと考えつつ二の足を踏んでいたらいつの間にか冬休みに入っていたというあれだ。
 そうならないようにたまにTLを覗く。誰かが作った曲のよさに打ちのめされて感想も伝えずにそっと閉じてしまう。ここは自分の居場所ではないという思いがまた強まる。うまく馴染める気がしない。

「ライブハウスにしか居場所がないお前ら」

 あるバンドのボーカルがいつも言っていた。「学校や会社でお前らがどんなに厭な奴か知らないけど、今ここに居るお前らが本当のお前らだからな」と。それ、逃げてるだけなんじゃないのといつも思っていた。ライブを観ている時間がいくら楽しくても戻るべき日常は何も変わらずそこにある。全く共感できずに覚めていく。会場は盛り上がる。

 自分はというと、学校にもライブハウスにも居場所がなかった。自室以外に居場所がなかった。周りに音楽に興味のある人間が居なかった。

 大学の軽音サークルに入りかけたことがあった。
 初めて部室を訪れたとき、そこにあったストラトとマーシャルでイキッてイングヴェイを弾いた。同じ新入生に「君がギターやるなら俺ベースに転向するからいっしょにバンドを組まないか」と誘われたが、自分よりレベルが低い人たちとやってもなと躊躇してその軽音サークルには入らなかった。大学で空き時間にギターを弾く環境があったらもっと上手くなっていただろうに。得られる経験が周りの演奏レベルに左右される訳でもないと今なら思う。

 バンドで出ていたラジオ局のイベントで知り合った、相棒と言って差し支えない鍵盤弾きといっしょにやっていた時期もあった。シンセが並んでいる彼の部屋で曲を持ち寄りセッションしたり、泊まり込みで曲を作ったり、楽しかった。俺が活動の仕方で行き詰まっていたときに声を掛けてもらい彼のバンドといっしょにスタジオに入ったこともあった。あのままずっといっしょにやっていたらどうなっていたのかなと思ったりする。彼といっしょに作った音源が1曲だけ手元に残っている。
 俺よりギターが上手い後輩からも「自分がベースをやるからあなたとバンドがやりたい」と言われたことがあった。結局彼とは一度じっくり話をしただけだ。

 振り返ってみると居場所も仲間も得られる機会があったのに、自分で棒に振っていたのだな。少しでも妥協するくらいなら独りでやろうという姿勢が間違っていたのかも知れない。