戻らない進まない

頑張っていれば何とかなると思っていた。
続けていればいつかは手が届くと思っていた。
どうにもならなかった。
目指している場所には残りの人生を全て使っても辿り着けそうにない。そのことが分かっても引き返すにはもう遅い。夢中になっているうちに随分遠くまで来てしまった。
振り返ると引き換えに諦めてきたものが並んでいる。真っ当な仕事、結婚、子ども、豊かではないにしても人並みの生活、車、イヌ、色々なものを犠牲にしておいて、今自分の手には何もない。
元々人付き合いを殆どしてこなかったので外食することも後輩に奢ることもなく、もやし等安い食材ばかりで食い繋いで貯金をして、自分の音楽を奏でるための機材を揃えた。中古で買ったずっと憧れていたレスポール、雲よりも遙か上に居るあの人のギター、一生に一度くらいはと新品で買ったギブソンの355。
しかし欲しかった機材を揃えても、辿り着きたかった場所には立てていない。