身勝手ライナーノーツ第2回 BiSH「プロミスザスター」

f:id:xiukj:20230627013147j:image

 BiSH解散までに10回は書こうと思っていたのだが、残すところあと3日でまだ第2回という体たらくっぷり。東京ドームでの解散公演が近づくにつれて気持ちの行き場が分からなくなっている。

 「新生クソアイドル」として活動していたBiSHがメジャー・デビューを機に「クソ」を捨て「楽器を持たないパンクバンド」へと昇華した。「アイドル」という枠に囚われないという気持ちも込められていたと思う。メジャー・ファースト・アルバム収録の「オーケストラ」で奇を衒った路線ではなく真っ当な曲で勝負できることを示し、新たなファンを獲得するとともに人気を集めていった。しかし今回は「オーケストラ」についてではない。

 今回の主役はハシヤスメ・アツコだ。

 BiSHの魅力の一つは歌割りの妙だ。BiSHの楽曲は細かく歌割りされていて全員でユニゾンで唄うといったパートがほぼない。各メンバーが一人ずつ歌い、それをリレーのように繋いでいくのが持ち味になっている。主役の不在によるチームプレイの妙、BiSHの楽曲の殆どを手掛ける松隈ケンタによる功績だ。当然、自分のパートだけしっかり歌うという姿勢では上手くいかない。一つの歌になるように紡いでいくには、前の人から自分、そして次、という風に気持ちのバトンの受け渡しが重要になってくる。
 BiSHを深く知る前はアイナ・ジ・エンドが歌っている印象が強かったが、曲によってはアイナの歌割りがほぼなかったりすることに驚いた。メンバー6人全員が同じ歌唱力という訳ではないし歌い方にバラつきはあるが、それぞれの持ち味が最大限発揮できるように割り振られていることに感心する。

 「プロミスザスター」の最後のサビ、アイナからセントチヒロ・チッチと続き、もう一度最後のアイナにバトンを繋いでいるのがハシヤスメなのだ。その繋ぎ方が本当に絶妙で、自身の存在感を打ち出すとともに最後はエースのアイナに任せるという、そんな気持ちが込められているように聞こえる。
 主役の不在と前述したが、誰が何と言おうと「プロミスザスター」の主役はハシヤスメ・アツコなのだ。

 自分が選ぶベストライブテイクは2021年12月5日マリンメッセ福岡。ハシヤスメの凱旋公演だし、最後のアイナのロングトーンの響きも最高だ。