身勝手ライナーノーツ第1回 BiSH「BUDOKANかもしくはTAMANEGI」

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 自分がどハマりしているBiSHの魅力をひとりでも多くの人に知って欲しいという思いがあるのだが、みんな自分が好きなものは自分で勝手に見つけるだろうし、誰かから薦められるのは取っ掛かりとしては弱いというのを経験から知っている。なので自分が感じていることの備忘録として書き残しておこうと思う。
 BiSHについては以前富士急ライブ前に書いたのだが、あれもこれも書こうとしてしまったために焦点がぼやけ無駄に長くなりまとまらなかったので、少しずつ記していこうと思う。

 ファンになってどっぷり浸かってみないと分からない魅力というのはある。内側からじっくり観察し続けないと見えて来ない風景。
 2021年大晦日、BiSHは念願だった紅白歌合戦への初出場を果たした。多くの人の目に触れ新規ファンを獲得するまたとない機会だった。ところが紅白を観た姉に感想を訊いたところ「酷かったよ」の一言で片付けられてしまった。知らない人に取ってはたった一度のパフォーマンスが評価の全てになってしまう危うさを感じるとともに、世の中のことは概ねそんなものだよなと落ち込んでしまった。紅白きっかけでファンになった人も見かけるので、魅力に気づく何かを感じさせることができたのは確かなはずだ。


 BiSH「BUDOKANかもしくはTAMANEGI」
 作詞:セントチヒロ・チッチ×松隈ケンタ×JxSxK


 セカンド・アルバム『FAKE METAL JACKET』の最後を飾る曲だ。BiSHの楽曲はメンバーによる作詞が多く、この曲もそのひとつだ。松隈氏、渡辺氏との連名なのでどの部分をチッチが書いているのか分からないが、目指す場所への熱い思いが感じられる。ロックバンドが目指す聖地としての日本武道館。到達点でありさらに上を目指す通過点でもある。

    「びしょ濡れのシャツが
     ぐしゃぐしゃなその笑顔が
     いつだか忘れかけてたコト
     ふと思い出させてくれたんだ」

 最初はこの部分を、頑張っている他のミュージシャンの姿を見て奮起すると解釈していたのだが、ある時ふと、ステージから見える我々清掃員のことを指しているのではないかと気づき熱くなった。最高にエモい。

    「もう何も恐れはしないよ
     逃げないでくれ
     そこに立つための資格を
     掴みたいんだ」

 BiSHは現在ラストツアー中で、6月29日東京ドームでのライブをもって解散することが決まっている。BiSHとしては武道館のステージに立つことはなかった訳だが、2018年の時点で動員を上回る横浜アリーナでのライブを成功させている。
 自分が選ぶベストライブテイクは2019年9月23日大阪城ホール。この日の1曲目で歌われた「BUDOKANかもしくはTAMANEGI」は、もがき続けた末に目指す場所へ辿り着けた多幸感と祝福に包まれている。

 余談だが、この曲の発表時に在籍していたハグ・ミィの歌割りを後任のアユニ・Dが全て引き継いでいる訳ではなく、一部アイナ・ジ・エンドが歌っている。その部分の歌詞がアイナにぴったりで絶妙だなと思ったりする。
 ハグ・ミィの歌声が放つ切なさがとても魅力的で、この時にBiSHを知っていたらハグ・ミィを推していたのではないかと思う。
 チッチとハシヤスメ・アツコの「一度だけ」の滑舌の悪さが似ていたりして微笑ましい。

 ラストツアー最終日の5月25日とラストライブ6月29日の間にサプライズで日本武道館公演が発表されたりはしないだろうかと少し期待してしまう。