演奏するということについて

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 自分は14歳でギターを弾き始めた。スティーヴ・ヴァイがギターを手にしたのは13歳の時だという。始めた年齢は余り変わらないが決定的な違いがある。ヴァイは6歳からオルガンを弾いていた。大村孝佳もエレクトリックギターを始めたのは14歳の時だが、3歳からピアノを弾いていた。
 幼少期から楽器演奏をしているかどうか、これがとても大きい。
 勘違いしている人も多いが、演奏に必要なのは筋肉の発達ではない。筋トレは演奏の補助にこそなれ、本質には食い込んでこない。筋肉ではなく、神経細胞の数が多いほど指を速く動かせるようになる。演奏に必要なのは脳と神経の発達で、11歳以前に楽器演奏を始めていることがとても重要になってくる。楽器演奏は幼い頃の努力がちゃんと報われるものなのだ。それは才能の一言で片付けられる類いのものではない。先天的ではなく、楽器の訓練によって脳や神経細胞が発達することが証明されている。

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 もちろん12歳以降に始めても、正しい練習方法で長時間練習をすれば神経細胞は発達しないこともないが、その差は歴然だ。才能のない人間ほど早めに楽器演奏を始めていた方が有利に働く。
 長年ギターを弾いているからこそ分かることがある。自分にはギターを演奏する才能がない。ギターが大好きだからこそそれが痛いほどよく分かる。
 あるミュージシャンから「楽器の練習はもっとちゃんとした方がいい」とさらっと言われたことがある。それまで様々なことを犠牲にして捧げてきたギターの腕前を一言でさらっと否定された。本当にさらっと言われたので、もう笑うしかなかった。笑えなかったけど。朝学校へ行く前にギターを弾いて帰宅してから寝るまでギターを弾いても一蹴される程度の腕前にしかならなかった。
 それでもギターを弾き続けているのは何故なのだろうかと毎日思う。続けていられることが才能だと言う人も居るけど、全く何の慰めにもならない。挫折しているのに続けていることが自分でも不思議で仕方がない。
 ギター歴1年の高校生のソロギター弾きやベース歴2年の16歳ベーシストをSNSで見かけると、やっぱり才能がある人は出だしから違うなと痛切に感じる。始める年齢が遅かったから楽器演奏が上手くならなかったなんていうのは自分の才能のなさへの言い訳でしかない。

 

参考文献
古屋晋一『ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム』春秋社